2026-03-14

料理はお守り…藤原奈緒さんの料理哲学を身近に感じられる一冊。

この本が入荷してきてから、ずいぶんと時間が経ってしまいました。
パパろばに何度「いつになったら紹介してくれるの?」と言われたことでしょう(笑)。

去年の秋「ろばさんについてもちょっとだけ触れているので」と発売されてすぐ見本を送ってくださったのを読んで、感動してしまった1冊。

これはもう、レシピ本とは呼べない。
極上のエッセイ、いや、私小説と呼んでもよいのかもしれない。

今年の1月に奈緒さんを講師にお迎えしてお料理教室を開催しました。
大変に盛況となった「あたらしい乾物料理ふじわら」の会。

作ったメニューがいちいち全て美味しかったのはもちろんですが、乾物のお豆をいきなり調理する煮戻しや切干大根を水に浸さずにギリギリの水分で戻して素材の味を流出させずに使うやり方など、文字通り「あたらしい」奈緒さんのお料理に、参加者一同感嘆続きの2時間でした。

料理教室の目玉レシピでもあった「納豆辣油の作り方」も巻末に掲載されている。


レッスンの最中にも、次々と金言が飛び出すのです。

「お料理がマンネリになるという方にはまず、切り方を変えてみてもらってるんです。切り方が変わると味が変わりますから」

「きれいだなと思ったら、それは美味しいサイン」

いちいち、ははあ~っと感じ入ってしまう。
アシスタントとして調理器具を洗うなどしていなかったら、ずっとメモを取り続けていたかった。

お料理って、深い。人生そのものみたいだ。

でも料理人がすべてみな、奈緒さんのように仕事場であるキッチンで得た経験を言葉にして伝えられるわけではないはず。

奈緒さんは優れた料理家であり、文筆家でもあるのだ。

なんて、美しい言葉づかいをする人なんだろう。
なんて素直で、飾らない言葉を選ぶことができる人なんだろう。

そしてなんておいしそうに、みずみずしく、情景を綴ることができる人なんだろう。

端的でエッセンシャルな、でも、心の深いところにまで届くシンプルな言葉たち…。

藤原奈緒「あたらしい日常、料理」の1ページ

送っていただいた時には「どこにろばの家のことが書いてあるんだろう?」とドキドキ。あった!と見つけた時のわたしの有頂天ぶり…何度も何度もその箇所を声に出して読んでしまいました。

「オリーブオイルはふじわらの取り扱い店でもあるつくばの「ろばの家」で買うことがほとんど。信頼できるお店や目利きがいるといいですね。」

…目利き…(ウットリ)。

生まれてこのかた、目利きだなんて呼ばれたことがなかあったわたしは嬉しくてこそばゆくて、何度もその箇所を読み返してはニヤニヤ。

はじめは「どこにうちのお店のことが書いてあるんだろう」ということばかり気になって急いで読んでしまったのですが、ゆっくり読み直した後すぐに奈緒さんにメッセージを送りました。

「これ、レシピ本コーナーに置いておくのもったいないですよ。わたし3回泣きました」

ひとによって響く箇所は違うと思いますが、この本を読んでわたしのように感動してしまう人はきっと少なくはないだろうと思います。

「でもこれ、壮大なのろけ私小説でもありますね」とついからかってしまいましたが、奈緒さんが東京から北海道へ移住したタイミングでの執筆ということもあり、料理を軸として仕事、暮らし、恋愛、人生観までもうかがえる濃密な内容であることも、レシピ本の域を超えていると感じた理由だと思います。

一昨年奈緒さんの「移住を決めたら、恋人ができました」という、衝撃のSNS投稿で料理界隈が大いにわきました。パートナーのさりげない言葉や奈緒さんとの絶妙な距離感がまたよいのです。美味しいもの、それを楽しむ時間を共有することの喜び、安心感。そんな、おそらくはわたしだけでなく他の多くのひとが「人生において一番大切なもの」と無意識に位置付けている日常のなかのさまざまな事柄を、とても丁寧に、いっさい飾ることなく、まっすぐに描いています。

「料理は面倒と思うかもしれない。でも、丁寧に作った料理は自分を助け、支えてくれる。(中略)
ごはんがおいしく作れると、きれいな夕焼けを見たような気持ちになる。自分で自分の中に火を灯せること、それが料理だと思う」

「自分で作った料理を美味おいしいと思うことと、鏡にうつった自分を悪くないと思えることはそう遠くないような気がしている。」

「セルフケアとか、セルフラブ。最近よく言われるようになったけれど、料理はケアだし、ラブそのもの。自分の心がわからないときも、お腹はすく。今、何が食べたいか、を自分に問うのはいちばん簡単に自分と向き合うことだと思う。」

—-本文より抜粋。


ああ、そうだ。きっと、そういうことだったんだ。

きっと皆さん、読んだ後台所に直行しますよ。

多くの人が見逃してしまうような、ちいさな、けれどきっと実はとても大切な、日常の一コマ。お料理が好きな人だけでなく、文学を愛する人にも読んでいただきたい本です。

美しい写真の数々もこの本のみどころです。使用されているうつわにもぜひ注目していただきたい。目利きとはまさに奈緒さんご本人を指す言葉で、奈緒さんがずっと集めてきた素晴らしい作家もののうつわやアンティークの道具など、思わずまるごと一式セットで欲しくなってしまうような美しいしつらえにうっとり。ちなみに冒頭の画像の漆のうつわも臼杵春芳さんの作品です。

ろばの家としては、おすすめせずにはいられない一冊なわけです。
奈緒さんの初書籍「あたらしい日常、料理」はコチラから。




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